
<あらすじ>
謹慎を解かれた良樹だが、新たに配属された女官たち
によってうまれたテシム王子とクム王子の距離感に不安を覚える。
一方、良樹への気持ちを自覚したリシドは、このまま妾妃として、
良樹を後宮に留めておくべきか悩みはじめた。
異世界トリップ小説 第十一巻
A5 表紙フルカラー 2段組 44P 300円
ちょっとだけ二人の関係も前進したかな。
前に配布したSSも加筆再録しました。
当初の頃のご無体系エロが書きたくてしかたなくて、エロを加筆してるから。
ごめん。
まだ続いてます。
よろしくお願いします。
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身代り囚妃の祈り11より抜粋
いや、そもそも、女性がいるなら、自分を抱くなんてしなくなるのが普通だろう。リシドだって、男は良樹が初めてだと言っていたし、そういう嗜好があったわけではない。
もちろん自分だって、同性愛の嗜好なんてほんとはなかった。
今でも後孔を使われるのは抵抗があるし、痛いし、苦しいし、好きじゃない。
だったら、リシドに女性がつく可能性があることは喜ばしいことなんじゃないのか。
やっと、苦痛と恐怖の時間から解放される可能性がでてきたってことで。
むしろ、その女官をたきつけるくらいの気持ちになってもいいはずなのに。
なのに
なんでか
全然ならない。
すごくいやだ。
リシドがあの腕で、だれか別の女性を抱きしめるのかと思うと、それは、なんだか、胸が黒くもやもやするように重くなる。
良樹だって子どもではない。
こんな風に誰かと一緒にいる相手を想像しただけで嫌な気持ちになる正体を知っている。
見とめたくはないけれど、
これは
嫉妬だ。
独占欲だ。
一緒にいるように、いつも強引に引き寄せられていたから、考える余地なんてなかった。
いつだって良樹が望まなくとも、リシドは良樹の身体を求めて溺れていたのを知っていたから。
恥ずかしい。
求められることが、あたりまえだと思い込んでた自分に気付かされて、恥ずかしさをまず感じた。
あの朝、目覚めた自分に寄り添う王に、心を求められて、本当は嬉しかったのに、ごちゃごちゃと自分に理由を探して認めようとしなかった幼さが恥ずかしい。
こんな、本当にリシドが女官に手をつけたわけでもないのに動揺してしまうほどに、自分こそがリシドに当たり前に執着していたことを、今さら気付いた自分の鈍さにも恥ずかしかった。
「ヨシキ様ー、真っ赤ですよ」
あまりにいきなり、もの思いにふけり始めた良樹を心配して、覗きこむようにしてアムが声をかけてきた。
まあ、長く仕えてきたアムには、良樹の今の思考など手に取るようにわかる。
というか、年の割には気持ちも含めて性的な成熟が遅いなあと、いつもはらはらと見守ってきたのだ。
体のことはガル茶があるから仕方ないとはいえ、良樹は、無意識に幼くあろうとしていた部分がある。
それはリラの庇護を得るための本能のようなものでもあったろうし、妾妃となってからは、自分の心を守るためでもあったろう。
けれど、そろそろわからなくてはいけない時期なのだ。
こうなったからには、王との絆を深めることが、良樹には必要なのだから。
ほんの少し、きちんと自分の心を覗きこめば、聡明な良樹にはすぐに気付ける感情のはずだ。
図らずも、本来なら歓迎したくない女官らのおかげで、良樹が自問する機会ができてしまった。
真っ赤になってしまった良樹に、アムは手のかかる弟をみるような目で王の話をする。
「とりあえず、今日は王が夜にお越しになるみたいなんですけど、きいてらっしゃいます?」
一気に押し寄せてきた動揺に、顔が赤くなっている自覚のある良樹は、俯いたままこくこくと頷いた。
「お支度いたしましょう。湯をもってきますので体を拭いて、まずは着替えられますか」
頷く良樹に、アムはそっと懐から貝の入れ物を取り出し渡した。
閨事につかう、潤滑用の油だ。
一目見て、良樹の頬がさらに朱に染まった。
「さすがに病み上がりでらっしゃるのですから、ガルダ殿に釘をさされてはいると思うのですが、まあ、念のためにお持ちください」
恥ずかしい。
このやりとりも何回やっても、すごく恥ずかしい。
俯いたまま頷いた良樹は、アムからそれをうけとって、枕元に忍ばせる。
本当に久しぶりにゆっくり王と話すことになりそうで、ついさっき自覚したいろいろな気持ちもあり、良樹はアムがでていくのを、真っ赤になって俯いたまま見送った。